あたご工房
天文と電子工作とコンピュータなどについて日々の出来事を書いています。
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月食の画像処理
昨年の11月にあった部分月食の画像処理を行っていませんでした。
遅ればせながら画像処理をしてみます。
今回のエントリも備忘録的な意味合いが強いです。
手順としては以下のようになります。
1.前処理(ステライメージ)
2.HDR合成(GIMP)
3.仕上げ処理(GIMP)
1.前処理
一般的な前処理ですが、ステライメージで前処理だけやるのってどうやるのでしょう。
ばらばらの処理なので詳細モードで1つ1つ処理してみます。
1.1 ダーク画像のコンポジット
ダーク画像は複数枚撮影していますが、暗電流によるノイズが含まれるのでコンポジットによりノイズを低減します。
ステライメージの公式ガイドブックも購入してますので、これに従って処理を行います。
まずバッチ→コンポジットでコンポジットパネルを出します。
読み込みはベイヤー配列を選択します。
コンポジット設定は加算平均でアルゴリズムはバイキュービックを選択します。
あとは実行します。
警告ダイアログが出ますがそのまま実行です。
出来上がったファイルはfits形式で保存しておきます。
フラットフレームがある場合は同様の手順でコンポジットしておきます。
今回の月食撮影ではフラットを撮っていませんでした。
ライトフレームに適用するためバッチ→共通ダーク/フラット補正を選択します。
ライトフレームの読み込み時もベイヤー配列を選択します。
(ダーク・フラットフレームがベイヤー配列のため)
必要なファイルを選択して実行するとダークとフラット補正が完了します。
処理したライトフレームはfits形式で保存しておきますが、ウィンドウは閉じずにそのままにしておきます。
1.2 ホット・クールピクセル除去
コンポジットでは熱ノイズのような弱いノイズ低減に効果があります。
一方で宇宙から降り注いでいる放射線により強烈な感光を起こしてしまう場合があります。
コンポジットでは取り切れないこのようなノイズをホットピクセルと呼ぶようです。
一方で液晶のドット抜けのように受光素子にも機能しないピクセルが一定数あり、こちらをクールピクセルと呼ぶようです。
これらのホットピクセル・クールピクセルの補正を行います。
フィルタ→ホット/クールピクセル除去を選択します。
とりあえはデフォルト設定のままで良いと思います。
1.3 RAW現像
これまでファイルを開く際にはベイヤー配列という形式で読み込みました。
これは映像素子のデータの並びそのままに読み込んだもので、モノクロの画像です。
ここからカラー画像へ変換するのがRAW現像になります。
複数のライトフレームを処理しなければならないのですが、RAW現像のバッチ処理がありません。
画像→ベイヤー・RGB変換を選択します。
ここで問題。
Wine環境の限界でしょうかホワイトバランスの設定変更をしようとするとエラーになってしまいます。
仕方がないので別の方法を考えます。。
1.4 やり方変更(自動処理)
自動処理モードだとどうなのか試してみます。
ステライメージの環境設定を覗いてみたところ、ワークディレクトリっぽいパスを見つけました。
ライトフレームとダークフレームを読み込みます。
この状態で前処理だけ実行させます。
先程見つけたワークディレクトリを見てみると、何やらファイルができています。
テキストファイルを開いてみます。
ホワイトバランスが狙っていた通りの(撮影時)で処理されました。
先程のワークディレクトリからfitファイルを画像処理用のディレクトリにコピーしておきます。
ちなみにステライメージを終了させるときに、ワークディレクトリにファイルがあるがどうするか聞かれましたので消去を選択しました。
2. HDR合成
今回は部分月食ということもあり、光っている部分と影になっている部分で明るさがかなり違います。
そこでハイダイナミックレンジ(HDR)合成という処理を行って黒く潰れたり、白く飛んだりしている部分を浮かび上がらせます。
まずは以下の3つの画像を用意します。
月の光っている部分が適正露出となっている画像:L画像
上記より影の部分が見えてきている画像:M画像
影の部分がよく写っている画像:H画像
今回は以下の3枚をLMH画像としました。
L画像
M画像
H画像
これらをH画像が最下層、その次がM画像、最上位がL画像となるようにレイヤを配置します。
そしてL画像とM画像レイヤのモードをScreenにします。
Screenモードでは上位レイヤの暗い部分は暗さに応じて下位レイヤの画像が透けて見えるようになります。
気をつけなければいけないのは、上位レイヤで明るい部分でも明るさがMaxでなければわずかながら下層の画像の影響を受けてしまうという点です。
なので、そのまま単純にScreen合成するとこのような画像になります。
H画像よりも明るいですが、ハイライト側のディテールが失われてしまいました。
明るい部分は下層レイヤの影響を受けさせたくありません。
ということで下層レイヤの最大輝度を下げます。
色→レベル調整で明るい部分が潰れない程度のレベルになるよう、出力レベルの右側三角を左方向に動かしていきます。
星ナビなどでは半分くらいに落とすよう書かれていましたが、ハイライトの影響をなくそうとしたらこれだけ絞り込む必要がありました。
Screen合成では単純に下層が透けて見えるのではなく加算されているのではないかと思われます。
HDR合成後でもまだハイライト部分は飛び気味ですし、暗い部分は潰れ気味なので色→シャドウーハイライトを使い、ハイライトはレベルを下げて、シャドウは持ち上げます。
またステライメージでRAW現像すると色味が薄くなってしまうようです。
色→Hue-Saturationで彩度(Saturation)を持ち上げます。
1回目100%、2回目50%としました。
さてこうしてできた画像がこちらです。
だいぶ良いですね。
3. 仕上げ処理
仕上げはトーンカーブで暗部の強調を行い、色温度(色→Color Temperature)でターコイズフリンジを肉眼で見た感じにします。
色温度は現在の画像の色温度と、調整後の色温度を指定するようです。
6500Kがデフォルトのようです。
入力はそのままとし、出力を6000Kとしました。
今回はターコイズフリンジを意識して観望していたので見た目にだいぶ近いと思います。
今回の月食はほぼ皆既の部分月食でしたが、最大食分前に曇ってしまいました。
前回(2021/5/26)の皆既月食はスーパームーン皆既月食でした。
せっかくなので大きさを比較してみます。
並べてみると結構大きさが違いますね。
次回は2022年11月で、前回と同様に皆既中に星食が起きます。
しかも天王星です。
今回の撮影パラメータ(感度・露出)は結構良かったと思います。
ただ露出時間を振りまくったのでブラケット撮影+手動で露出変更で大変でした。
次回はステラショットで自動化できるといいですね。
↓押して頂けると嬉しいです。
遅ればせながら画像処理をしてみます。
今回のエントリも備忘録的な意味合いが強いです。
手順としては以下のようになります。
1.前処理(ステライメージ)
2.HDR合成(GIMP)
3.仕上げ処理(GIMP)
1.前処理
一般的な前処理ですが、ステライメージで前処理だけやるのってどうやるのでしょう。
ばらばらの処理なので詳細モードで1つ1つ処理してみます。
1.1 ダーク画像のコンポジット
ダーク画像は複数枚撮影していますが、暗電流によるノイズが含まれるのでコンポジットによりノイズを低減します。
ステライメージの公式ガイドブックも購入してますので、これに従って処理を行います。
まずバッチ→コンポジットでコンポジットパネルを出します。
読み込みはベイヤー配列を選択します。

コンポジット設定は加算平均でアルゴリズムはバイキュービックを選択します。
あとは実行します。
警告ダイアログが出ますがそのまま実行です。
出来上がったファイルはfits形式で保存しておきます。
フラットフレームがある場合は同様の手順でコンポジットしておきます。
今回の月食撮影ではフラットを撮っていませんでした。
ライトフレームに適用するためバッチ→共通ダーク/フラット補正を選択します。
ライトフレームの読み込み時もベイヤー配列を選択します。
(ダーク・フラットフレームがベイヤー配列のため)

必要なファイルを選択して実行するとダークとフラット補正が完了します。
処理したライトフレームはfits形式で保存しておきますが、ウィンドウは閉じずにそのままにしておきます。
1.2 ホット・クールピクセル除去
コンポジットでは熱ノイズのような弱いノイズ低減に効果があります。
一方で宇宙から降り注いでいる放射線により強烈な感光を起こしてしまう場合があります。
コンポジットでは取り切れないこのようなノイズをホットピクセルと呼ぶようです。
一方で液晶のドット抜けのように受光素子にも機能しないピクセルが一定数あり、こちらをクールピクセルと呼ぶようです。
これらのホットピクセル・クールピクセルの補正を行います。
フィルタ→ホット/クールピクセル除去を選択します。
とりあえはデフォルト設定のままで良いと思います。

1.3 RAW現像
これまでファイルを開く際にはベイヤー配列という形式で読み込みました。
これは映像素子のデータの並びそのままに読み込んだもので、モノクロの画像です。
ここからカラー画像へ変換するのがRAW現像になります。
複数のライトフレームを処理しなければならないのですが、RAW現像のバッチ処理がありません。
画像→ベイヤー・RGB変換を選択します。

ここで問題。
Wine環境の限界でしょうかホワイトバランスの設定変更をしようとするとエラーになってしまいます。

仕方がないので別の方法を考えます。。
1.4 やり方変更(自動処理)
自動処理モードだとどうなのか試してみます。
ステライメージの環境設定を覗いてみたところ、ワークディレクトリっぽいパスを見つけました。
ライトフレームとダークフレームを読み込みます。
この状態で前処理だけ実行させます。

先程見つけたワークディレクトリを見てみると、何やらファイルができています。

テキストファイルを開いてみます。

ホワイトバランスが狙っていた通りの(撮影時)で処理されました。
先程のワークディレクトリからfitファイルを画像処理用のディレクトリにコピーしておきます。
ちなみにステライメージを終了させるときに、ワークディレクトリにファイルがあるがどうするか聞かれましたので消去を選択しました。
2. HDR合成
今回は部分月食ということもあり、光っている部分と影になっている部分で明るさがかなり違います。
そこでハイダイナミックレンジ(HDR)合成という処理を行って黒く潰れたり、白く飛んだりしている部分を浮かび上がらせます。
まずは以下の3つの画像を用意します。
月の光っている部分が適正露出となっている画像:L画像
上記より影の部分が見えてきている画像:M画像
影の部分がよく写っている画像:H画像
今回は以下の3枚をLMH画像としました。
L画像

M画像

H画像

これらをH画像が最下層、その次がM画像、最上位がL画像となるようにレイヤを配置します。
そしてL画像とM画像レイヤのモードをScreenにします。
Screenモードでは上位レイヤの暗い部分は暗さに応じて下位レイヤの画像が透けて見えるようになります。
気をつけなければいけないのは、上位レイヤで明るい部分でも明るさがMaxでなければわずかながら下層の画像の影響を受けてしまうという点です。
なので、そのまま単純にScreen合成するとこのような画像になります。
H画像よりも明るいですが、ハイライト側のディテールが失われてしまいました。

明るい部分は下層レイヤの影響を受けさせたくありません。
ということで下層レイヤの最大輝度を下げます。
色→レベル調整で明るい部分が潰れない程度のレベルになるよう、出力レベルの右側三角を左方向に動かしていきます。
星ナビなどでは半分くらいに落とすよう書かれていましたが、ハイライトの影響をなくそうとしたらこれだけ絞り込む必要がありました。

Screen合成では単純に下層が透けて見えるのではなく加算されているのではないかと思われます。
HDR合成後でもまだハイライト部分は飛び気味ですし、暗い部分は潰れ気味なので色→シャドウーハイライトを使い、ハイライトはレベルを下げて、シャドウは持ち上げます。
またステライメージでRAW現像すると色味が薄くなってしまうようです。
色→Hue-Saturationで彩度(Saturation)を持ち上げます。
1回目100%、2回目50%としました。
さてこうしてできた画像がこちらです。

だいぶ良いですね。
3. 仕上げ処理
仕上げはトーンカーブで暗部の強調を行い、色温度(色→Color Temperature)でターコイズフリンジを肉眼で見た感じにします。
色温度は現在の画像の色温度と、調整後の色温度を指定するようです。
6500Kがデフォルトのようです。
入力はそのままとし、出力を6000Kとしました。
今回はターコイズフリンジを意識して観望していたので見た目にだいぶ近いと思います。

今回の月食はほぼ皆既の部分月食でしたが、最大食分前に曇ってしまいました。
前回(2021/5/26)の皆既月食はスーパームーン皆既月食でした。
せっかくなので大きさを比較してみます。

並べてみると結構大きさが違いますね。
次回は2022年11月で、前回と同様に皆既中に星食が起きます。
しかも天王星です。
今回の撮影パラメータ(感度・露出)は結構良かったと思います。
ただ露出時間を振りまくったのでブラケット撮影+手動で露出変更で大変でした。
次回はステラショットで自動化できるといいですね。
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